東京高等裁判所 昭和41年(ラ)102号 決定 1967年2月07日
抗告人 杉山昌樹(仮名)
相手方 杉山とめ(仮名) 外一名
主文
原審判を取消す。
本件を宇都宮家庭裁判所足利支部に差戻す。
理由
抗告人の本件抗告理由は、末尾添付別紙記載のとおりである。
抗告理由一、について
原審判によれば、原審は被相続人亡杉山金兵衛の遺産分割事件について、被相続人金兵衛が昭和三八年九月七日死亡し、その妻である杉山とめ、兄である杉山源蔵、弟である杉山昌樹(抗告人)の三名が共同相続した事実を確定すると共に、右各相続人の法定相続分はとめが三分の二、源蔵および抗告人が各六分の一であると判示し、これを前提として本件遺産分割の審判をしていることが明らかである。ところで記録に綴られた戸籍謄本によれば、抗告人は被相続人たる金兵衛と父母を同じくする兄弟(いずれも、その父は杉山辰一郎、母はハマ)であるけれども、源蔵は、被相続人たる右金兵衛と父のみを同じくし母を異にする兄弟(源蔵の父は杉山辰一郎、母はたま)であることが明らかである。されば、民法第九〇〇条第四号の規定により、源蔵の相続分は法律上、抗告人の二分の一の計算になり、結局、本件各相続人の法定相続分は、妻とめが三分の二、抗告人が九分の二、源蔵が九分の一の割合になるものといわなければならない。しかるに、原審は、上記のとおり源蔵および抗告人の相続分を各六分の一であるとし、これを前提として本件遺産分割の審判をしているのであって、ひっきょう原審は、遺産分割の基礎となる相続分の算定を誤ったものというの外はない。したがって、この点に関する抗告人の主張は理由があり、原審判は取消を免れないものというべきである。
なお、本件のように最大の利害関係を有する抗告人については、調停においての態度に拘らず、審判においては、必ず審問をなすのが相当である。
よって、その他の抗告理由に対する判断を省略し、家事審判規則第一九条第一項に従い、原審判を取消し、本件を原審に差戻すべきものとし、主文のとおり決定する。
(裁判長判事 村松俊夫 判事 土井王明 判事 兼築義春)
抗告理由
一、審判は、杉山源蔵の相続人としての地位を誤認している。正しくは、添付の戸籍関係書類にみられるごとく、源蔵は、被相続人亡杉山金兵衛とは父のみをおなじくし母を異にする兄弟である。一方、私は、被相続人とは父母ともにおなじくする兄弟である。
したがって、両名の法定相続分がおのおの六分の一というのは誤りで、正しくは、源蔵が九分の一、私が九分の二となる。(民法九〇〇条の四)
二、審判書には、私が本件調停において、遺産分割方法について具体的な意見や希望を述べようとしなかった、と書かれているが、これには不服である。事実は、具体的な意見や希望があったにもかかわらず、それを申立てる機会が与えられなかったのである。
また、審判書に書かれてあるように、私は、審判手続きにおいても審問されなかった。これにも不服である。
(編下略)